久しぶりに東海道新幹線に乗りました。この原稿は、大阪の学会に向かう新幹線の中で書いています。コロナ禍も落ち着いていよいよ対面での学会が再開しています。移動中もしっかりと仕事しますよ、ということでグリーン車を取りました。揺れも少ないですし、静かです。これにAirPodsProのノイズキャンセリングを組み合わせれば完璧です!
新幹線、素敵ですね。いつも自由席なので、どうしても山手の席に座るのですが、今日は海側の席。今、熱海の街を通過しましたが、車窓からの風景に子供のようにワクワクしています。
さて、またその話題か、と叱られそうですが、今夢中になって勉強しているのがChatGPTです。特にGPT-4はかなり優秀で、その受け答えに常に驚いています。大規模言語モデルを用いた生成AIで、ディープラーニングの技術に桁の違うデータを与えたら、急速に賢くなりました、という代物です。
このAIは実は、処理の仕組みは人が与えましたが、コンピュータ側でどのような結果が導き出されるかがわからない、というブラックボックスになっているそうです。これまでのパソコンのプログラムは、こういう処理して、こういう計算結果を出す、という答えありきの処理が中心でした。しかし、何を導き出すかの答えがはっきりしないという部分で、AIはこれまでのプログラムと異なるもののようです。
さて、とても優秀なAIなので、これを当院の電子カルテに組み込んでみようと実験的にAPIを取得して、いろいろと試しています。正直、今のところ真っ赤な嘘をそれっぽく吐き出すので、全く使い物になりません。理由は明確で、カルテ内のすべての情報をGPT-4にきちんと渡せていないのが原因です。ところが調べていくうちに、GPTに対して一度に与えられる情報の量には限りがあることを知りました。(それもかなり少ない!)カルテ内の情報をすべてGPTに与える、というのは現状では無理みたいです(と、これもGPT-4さんに教えてもらいました)。
このAIの仕組みにおいて処理できる「言葉」の数は限られているそうです。チャット形式でひたすらやり取りを続けられるのですが、それまでの全てのやり取りを記憶して処理しているわけではなく、直近にある一定量のやり取りから次の回答を生成するそうなのです。膨大なネット上から学習したデータと、数回前のやり取りと、今回与えた質問に対して答えを導き出している、ということになります。
なんだか、これって、私達の診察に似ていると感じました。診察が終わると、記録を残して、頭を次の患者さんに切り替えます。次の患者さんの診察に入る時にカルテでこれまでの情報を確認します。重要なプロブレム、前回から今回にかけての指示、チェックポイント、そして体の検査データ、そしてその子の性格や食べているものまでを診察直前に瞬時に頭にインプットします。しかし、診察の合間の僅かな時間で、初診時からの膨大な量の情報を全て読むわけには行きません。ですので、カルテはこれらの本当に必要な情報だけを瞬時に頭に入ることが重要となります。そして、診察が終わると、必要な情報を記録して、頭をリセットして次の診察に入る、といった状況です。
診察に入る前の、この情報の質と適切な量が継続診察の質を変えるといっても良いと思います。私が電子カルテの作りにこだわる理由はここにあります。
診察ではカルテで得た直近情報と、その診察で得た情報と、そして過去に学んできた膨大な獣医学の知識から、最適な回答をアウトプットします。ChatGPTの行っている処理と同じであると感じた理由です。処理効率を追求した結果、人間の脳と同じような処理に結果的に近くなってきたのか、それとも最初から人間の思考回路を参考に作ったのかはよく知りません。
しかし、もっと言えば、人間の脳も同じともいえます。私達は朝起きた時に、目や耳などの感覚から得た情報を脳の中にある過去の記録(記憶)とあわせて、何かしら考えたり行動をしたりしています。脳もニューロンという電気で動く電子部品(神経細胞)の集合体です。予め学習された膨大な情報から、直近に得られた情報に基づいて、答えを出し続けていると考えると、AIの仕組みとなんら変わらないと感じることがあります。AIは自我を持つか、という問いがありますが、(「自我」の定義が難しすぎて私はできませんが)、こう考えていくと、すでに今あるAIは自我を持っているのかもしれません。
つまらないことをつらつら書きましたが、何にしても、興味深いことこの上なしで、これからどんな世界になっていくのか、いろんな新しい学びで大興奮の毎日です。もちろん、学会でもしっかりと獣医学の勉強してきます。
院長 畠中